SSブログ

最近の読書 2021年夏 その3 ―覚え書― [本(小説)]

引き続き、また読書です。
小説はしんどいと思い、図書館でおもしろそうな児童書をさがしていて、タイトルが目に付きました。


「ベルリン1919 赤い水兵」   クラウス・コルドン 作   酒寄進一 訳

ベルリン1919 赤い水兵(上) (岩波少年文庫)

ベルリン1919 赤い水兵(上) (岩波少年文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2020/02/16
  • メディア: 単行本


歴史物は堪能した感じがあって、違う傾向のものをさがしたが、この年齢で読むには少し物足りなかったり、興味があるものも見つからず、とりあえず借りてみました。

13歳の少年が主人公だし、巻頭の登場人物紹介を見ると、何だか親近感がわいてきた。
その時代に生きていた人々を知りたくなった。

児童書なので読みやすい(軽く読める)と思っていたが、とんでもなかった。
1918年11月から1919年冬の半ばまで三ヶ月ぐらいの、ドイツ革命下での物語。(こんな革命があったことさえ知らなかった。原題に「忘れられた冬」という言葉がある。)
すごくリアルで読み応えがあった。(フィクションだけど)当時の社会、生活が生き生きと描き出される。


ベルリンの中でも特に貧しい地区に住む少年ヘレ(ヘルムート)はアパートの階段で聞き覚えのない足音を聞く。父が戦争(第一次世界大戦)から帰ってきたところから物語が始まる。父は右腕を失くしていた。でも、帰って来られただけでもよしと言う。家族が一緒になれたことも。

国じゅうが飢えていて、ひもじくないというのが、どういう感覚かわからなくなっている。
父のために、食べ物を分けてもらいに、アパートの住人を訪ねると自分で釣った魚を分けてくれた。人とのつながりがあるドラマに、読みやすいと思ったら、会話が戦争や政治がらみのことばかり出てきて興味をひかれた。(でも、また暗く重そうな本を選んでしまった。)

少年のヘレがアパートの知り合いに伝令(運び屋)を頼まれたりするのだ。
父が革命を起こすグループの団員だったり、革命のデモで知り合った水兵と友だちになって、かくまったり。銃撃戦の中を、その水兵のあとに(子どもなのに)こっそりついて行ったりして、ヘレは”戦争”を目の当たりに体験することになる。

革命の最中でも、友だちとふざけたり、学校で先生に逆らったり、妹弟の面倒を見たり、隣人たちとクリスマスを祝ったり、普通の少年の生活も描かれる。
こんなに臨場感がある物語は久しぶりに読んだ。


戦争にまつわる言葉が印象に残って、考えさせられる。

「戦争で本当に得をするのは資本家たちだ!戦争はいい商売になる」(上巻 P.59 ヘレの父の言葉)
「戦争を終わらせるには戦争をするしかないってこともあるんだ」(P.65 父)

「物事をすばやく変えようとすることに、そもそも意味があるのかどうか ― だから、革命や血を流すことに反対なんだよ」(P.247 父の友人オスヴィン)

「― 連中がまた戦争をしようとしても、ぼくは手を貸さない」(P.301 ヘレ)


他にも、書きとめたい言葉がいっぱいで、テレビのドキュメンタリーや学校の授業よりずっと勉強になって、物語としても良い。
子どもだけでなく、大人に読んでほしいです。
(三部作で「ベルリン1933 壁を背にして」 「ベルリン1945 はじめての春」があります。)

nice!(4)  コメント(0) 
共通テーマ:

nice! 4

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。