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最近の読書 2024年春 ―覚え書― [本(小説)]

3月になったのですが、自分の所ではまだ寒いです。(寒さに弱い)

最近の読書。今回は、また(結局?)海外の古典です。
今年は日本の現代小説も読もうかと読みかけていたのですが、(今の)自分には合わなくて、読めそうな古典をさがしていて、モーパッサンになりました。


「女の一生」   モーパッサン   永田千奈 訳

女の一生 (光文社古典新訳文庫)

女の一生 (光文社古典新訳文庫)

  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2013/12/20
  • メディア: Kindle版

以前、最初の方だけ読んだことがあるのだが、タイトルが直接的すぎて、自分と比べそうで、何となく躊躇していた。でも、大河ドラマ的なものは好きだし、もう一作の「脂肪のかたまり」が良かったので、読んでみることにしました。

こんなにおもしろいとは予想外だった。
あらすじはわりとシンプル。目新しさや複雑な設定とかないし、よくある話なのだが、展開が劇的で読めてしまった。

主人公のジャンヌが、世間知らずなまま結婚し、あまりに過酷な現実に翻弄される。
自分で生き方を選ぶみたいな強い人物でなく、受け身なタイプだ。
時代背景(始まりは1819年)が違っても、人の考え方はそれほど変わらなく、現実的で共感しやすかった。

その生活とは対照的な、舞台のフランス、ノルマンディの風景描写がすごく良い。細密で映像が浮かぶようだ。伝統的な屋敷や家具、調度品などの描写も、読んでいて楽しい。
それらに、ジャンヌの心も慰められたりする。

ジャンヌの心理に覚えがあったり、共感するところがわりとあった。

印象に残った場面は、ジャンヌが自殺しようとして、思いとどまるところかな。
少し前の、頭に血が上り、身体の感覚が麻痺したように何も感じなかった。という描写から、意識が鋭敏になっていって過去のことが浮かんで、でも、最後に思ったのは、母親の姿だったこと。自分の死が父母に与える辛苦を想像したこと(できたこと)。

ちょっと意外だったが、終わり方も良かった。

読んだ時期が合ったのか、心に残る小説でした。



「脂肪のかたまり」   モーパッサン 作   高山鉄男 訳

脂肪のかたまり (岩波文庫 赤 550-1)

脂肪のかたまり (岩波文庫 赤 550-1)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2004/03/16
  • メディア: 文庫

上記のものよりこちらを先に読みました。
古典の短編でおもしろそうなものをさがしていて、わりと目に付くので読んでみた。
タイトルがちょっと引きそうだったのだが、読んで良かった。

物語の背景は1870年終わりの普仏戦争。プロシャ軍がフランスのルアンに入城。占領下のルアンを抜け出す、馬車で乗り合わせた十人の人々の旅を描く。
一人が「脂肪のかたまり」とあだ名がついている娼婦だ。

地位や立場が違う人たちの人間模様が興味深かった。
以前の職場の人間関係のやりとりを思い出した。大して変わらないようにも思えた。
六日間の旅と何ヶ月、何年の違いだが、自分の都合で態度がコロッと変わる。

共感するせりふもあって、根っからの悪人というわけでもないが、危機のもとで、人間の醜い面が、(その人の)本質があらわになる。
傑作と言われるのが頷ける小説でした。


ちなみにモーパッサンは、小学5年生頃に、文学全集の中の一冊に入っていた「首かざり」という作品を読んでいる。子どもなので、そんなに良いと思わなかったが、内容は(一部の文章も)覚えている。
何十年もたって、著者の作品を読むなんて思わなかったです。


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