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最近の読書 2022年夏 ―覚え書― [本(小説)]

7月になって、暑い毎日です。

最近の読書、(現実でも戦争が起こっていますが)ベルリン三部作の完結編「ベルリン1945 はじめての春」を読みました。(タイトルに合わせて春に書こうと思っていたのに、夏になってしまった)


「ベルリン1945 はじめての春」   クラウス・コルドン 作   酒寄進一 訳

ベルリン1945 はじめての春(上) (岩波少年文庫 625)

ベルリン1945 はじめての春(上) (岩波少年文庫 625)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2020/07/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


シリーズ第一部”1919”で主人公だった、少年ヘレの娘エンネ(12歳)が主人公。
エンネはヘレの両親(エンネの祖父母)に育てられていて、エンネは成長するまで(年はいっていたが)実の両親だと信じていた。

時代背景を書くと、あとがきの年表では、1939年9月1日にドイツがポーランドへ侵攻。
9月3日にイギリス・フランスがドイツに宣戦布告。第二次世界大戦勃発。(エンネはこの時、まだ6歳)
1945年4月22日にソ連軍、ベルリン市街に突入。5月2日ベルリン陥落、とある。

物語の始まりは1945年2月2日。ドイツが戦争を始めて6年目。エンネにとっては、物心ついた時からずっと戦争が続いている。
空襲警報が夜中に鳴って防空壕へ避難するという、衝撃的なところから始まる。

防空壕へ入ると、エンネがすることは日めくりカレンダーを見ること。「これでまた一日生きのびた」 警報解除で「助かった、今回も生きのびた ー」
想像するのもつらい。

エンネは(警報解除で)家へ帰ると、テーブルの上にメモがあるのを見つける。祖父はごまかすが、エンネは父からのものだと思い、メモの場所(祖父が行くだろう場所)へ(無謀にも)一人で行く。待っていたのは叔父(ヘレの下の弟)のハインツだった。

エンネは家族の秘密を通じて、時代を、戦争を知っていく。(読者も)


上巻は三部作(全6冊)の中で一番(つらいが)読み応えがあった。小説だけど、現実味がありすぎる。10代を対象に書かれているが(だから?)、容赦ない。

下巻は敗戦の混乱の中、父のヘレが帰ってくる。エンネにとっては、はじめて見る知らない人で、親しみが持てない。
ヘレと弟のハインツ、兄弟が久しぶりに再会したのに、意見の違いでわかりあうことができず、他人行儀になってしまった。
ナチのギュンターと結婚したマルタはヘレに過ちを悔いるが、溝はうまらない。
それぞれの気持ちが興味深く、考えさせられる。


(いつものように)書きたい言葉はありすぎて書けないが

行きずりの将校(実はヘレの学友)が「戦争が終わったら、新しい家を建てよう」と言ったことに対して、エンネの祖父が「あなたのその楽観主義、どこかで買えないか?」と言う。
それに対して将校が言う言葉。「希望をなくして生きていけますか?」(上巻 P.109)

エンネはただただ面食らっていた。こんなに長いあいだつづいた戦争、たくさんのものを破壊し、たくさんの人の命を犠牲にしたこの戦争がこんなにあっさり終わっていいのだろうか。― (上巻 P.261)

「― 戦争は永遠に続くわけじゃないだろう?おれたちは、もっとよく知りあわないといけない。平和条約なんてしょせん紙切れさ」(上巻 P.365 エンネの祖父の言葉)


「型にはめるだって?人間を型にはめられる?この呪われた十二年間、まさにそういうことのくりかえしだったって知らないのか? ―」
(下巻 P.192 ヘレの言葉)

敗戦の混乱の中、ドイツ市民のためにひらかれた音楽会へ行った時のミーツェの言葉。
「本当にすてき」「あたしたち人間はこんなすばらしいことができるのに、恐ろしいこともやってしまうのよね」(下巻 P.202)


一年かけてようやく読めました。本当に読み応えがあって、良かったです。
戦争について知らなかったし、深く考えさせられました。
10代、20代の人に読んでほしいと思いました。(もちろん大人も)



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