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「目の見えない人は世界をどう見ているのか」 伊藤亜紗 著 [本(新書/その他)]

これは新聞広告だったか(?)検索でなのか、忘れたのですが、タイトルに興味を持って書きとめていました。その後、テレビの「スイッチインタビュー」で著者の出演回を偶然見て、思い出したのでした。


「目の見えない人は世界をどう見ているのか」

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

  • 作者: 伊藤 亜紗
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2015/05/15
  • メディア: Kindle版

すごく興味深くて、良かったです。
視覚障害者やその関係者に対して著者が行ったインタビューや関わりをもとに、「見えない人」の世界を分析した本。
「空間」「感覚」「運動」「言葉」「ユーモア」の5章のテーマから成っていて、読みやすかった。

見えない人を三本脚の椅子に例えたのがわかりやすかった。脚が一本なくても(視覚なしでも)脚の配置を変えれば、三本でも立てる。異なるバランスで感じると、世界は全く違って見えてくる。「意味」が違ってくる。

目という器官を失っても、残された器官を作り替えて、新たな体で生きる。
本来の器官からは予想もしなかった能力を取り出して、「進化」にも似た様々な事例がとても興味深かった。

特に「空間」の章で、見えない人が三次元で見ていて、見える人より見えているものがある(それゆえ物のとらえ方を変えてしまう)話はおもしろかった。

電車で突然ブレーキがかかった時、つり革につかまっていた人でさえバランスを失ってよろめいたのに、白杖を持った男性は同じ場所に立っていたという話も印象に残った。

驚いたのは「言葉」の章での「見えない人の美術鑑賞」
常識を覆された。方法は、見える人と一緒に、作品について語り合いながら鑑賞するというもの。それは色やモチーフなどの「情報」や「解説」だけではなく、見た人が思ったこと、印象、思い出した経験などを言って、その「意味」や「解釈」を共有すること、というのが目からうろこでした。

見えない人と鑑賞することによって、見える人(複数)も見えない人に説明することによって、自分の見方が明確になって、他人の見方にも気付かされる。コミュニケーションが変わる。見える人が見えない人を導くのではなく、見えない人が見える人を導く、というのに目が開かれた。

上記のこととつながるような、見えない人(障害を持った人)との関わり方についての著者の提案にも、開かれた思いでした。
福祉的な「情報を与え、サポートする」だけでなく、見える人と見えない人の世界をお互いおもしろがるような、普通のノリで話し合えるような人間関係。

見える人も「見えていない」ことや「見え方」が皆違うこと、「障害」や「壁」についても、考えさせられました。




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