最近の読書 2019年夏 ―覚え書― [本(小説)]
昨年の今頃は、怖いぐらいの猛暑でバテバテだったのですが、今年はましでエアコンもあまりつけていません。
久しぶりに小説(児童書)を読みました。(昨年の秋以来だ)
子どもの頃、アニメで見ていた原作で、以前から気になっていたのだが、テレビ「100分de名著」(6月)でとりあげられて、興味を持ちました。(挿絵が入っている福音館文庫版を選んだ)
「ハイジ」 ヨハンナ・シュピーリ 作 矢川澄子 訳 パウル・ハイ 画
アニメを見た時は年代的にど真ん中で、感動した場面もあるが、進行が遅く、ドラマとしては正直、退屈な印象があった。
原作を読むと、教育的な(宗教的な)ものがテーマで、深い話のように思いました。(第二部は「勉強が役に立つとき」なんてタイトルが付いているのだ)
でも、物語としてはハイジを中心とした心の交流で、周囲の人が幸せになる話(こう書くと「少女パレアナ」もそういう話になるのかな)でしょうか。
一番心に残るのは、やっぱりハイジによっておじいさんが変わること。本来の人間になること。
おじいさんがハイジの話を聞いて、涙がおちた場面が印象に残っている。
子ども(ハイジ)によって大人(ペーターのおばあさんやクララのお医者さまも)が教えられること。
ハイジはおじいさんと暮らすだけでいろいろなことを学ぶ。
ハイジはおじいさんのすることをじっと見ている。一日牧場に行っただけで、聞きたいこと、語りたいことだらけで、おじいさんもそれに応える。
ハイジはやぎを注意深く見て、一匹一匹見分けられる。アルムの山や草花、自然がハイジにいろいろなものを見せて、教えてくれる。
ハイジはお金持ちのお嬢様クララの話相手に、フランクフルトへ連れて行かれる。
そこでハイジは字が読めるようになる。「勉強なんてどうせできない」と言っていたハイジに、クララのおばあさまは、物語の興味からハイジの読みたい気持ちを引き出す。
先生がどんなに説明しても覚えられなかったのに、一夜にして覚えたのだ。
「勉強」は「勉」めて「強」制するだけではだめで、心が欲する(動く)ことが大切ということを教えてくれる。
字が読めるようになったハイジは、ペーターのおばあさんにお祈りの歌を朗読して、おばあさんを幸せな元気な気持ちにさせる。
字だけでなく、おばあさまから信仰も教わったハイジは、おじいさんの心も変えてしまう。
今度はハイジがおじいさんを教えたのだ。
クララもアルムの山で歩けるようになるが、おじいさんが少しずつ立てるように教えたのだ。(おじいさんは昔、同じような人を看護したことがあって、その経験が役に立つ)
アルムの山がクララの心に教えたのだ。
「教育」によって人は変われる。でも、そこには「心」がないと人は育たない。
ペーターがクララに嫉妬して、車椅子を落として壊した時、クララのおばあさまがとがめず、ペーターの気持ちを察して諭した場面も心に残っている。
「腹が立てば、だれだってばかなことをしますよ」
お医者さまのハイジの病気の診断と処方に、感心させられた。
このお医者さまやクララのおばあさまのような大人が、現代にもっといてほしいと思います。
アニメではあまり描かれない、おじいさんやペーターのおばあさんの心情に感情移入した。
おばさんのデーテは子どもの頃は嫌な人に思っていたが、ごく普通の人に思えた。(そのおかげで、ハイジはおじいさんやクララとも出会えたのだ)
原作はいろいろな発見があって、良かったです。
アニメの話だが、オープニングの主題歌「おしえて」が、ずっと違和感みたいなものがあったのだが(歌詞が主題歌として浮いているみたいな)、原作を読んで納得しました。(すごく忠実に作られていたのだ)
内容的にも、原作に忠実でおもしろく、子どもに見やすく作られていたのがわかって、改めて当時のアニメ制作の熱意みたいなものに感心しました。
(アルプスの自然描写はやっぱりすごい。あと、他の記事でも書いたが、自分はハイジがフランクフルトからアルムの山へ帰ってくる場面が涙ぼろぼろなのです)
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