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最近の読書 2018年秋 ―覚え書― [本(小説)]

いつの間にか9月になって、いくらかすごしやすくなりました。
久しぶりです。職場での心の傷を引きずっていて、悶々としていました。
(なのに、こういう本を読んでしまった)。


「太陽と月の大地」   コンチャ・ロペス=ナルバエス   宇野和美 訳   松本里美 画

太陽と月の大地 (世界傑作童話シリーズ)

太陽と月の大地 (世界傑作童話シリーズ)

  • 作者: コンチャ・ロペス=ナルバエス
  • 出版社/メーカー: 福音館書店
  • 発売日: 2017/04/15
  • メディア: 単行本

これは絵本や童話の関連から検索していて見つけました。
タイトルと表紙絵にひかれたのだが、イタリア文学研究のベストセラー1位となっていて(児童書なのに?)、さらに興味を持ちました。(中学生の課題図書だったのだ)


舞台は16世紀のスペイン。歴史の背景にあるのはキリスト教徒とイスラム教徒の対立。
宗教や民族の対立は現代もなくなるどころか激化している。歴史物だが現代性があって課題図書にはぴったりだと思いました。

主役は農夫の息子エルナンドと伯爵の娘マリアだが、二人の家族の物語でもある。対立や不寛容によって変わる人間の悲劇として読んだ。
マリアの一家はキリスト教徒でエルナンドの方は母親を除いてモリスコ(元イスラム教徒でキリスト教に改宗)だ。
両家は主従関係で宗教が違うが、真の友で互いに信頼している。

でも、エルナンドの兄ミゲルは認めていても、権力者には反骨精神をむきだしにする。
エルナンドの祖父は伯爵の父と無二の親友だったが、内心は心穏やかでない。
マリアの次兄イニゴはモリスコを目の敵にしている。

そんな中、モリスコにアラビア語の使用や生活様式の禁止令が出たことから、家族の心はばらばらになる。父は憎しみや恨みでいっぱいだが、様子を見ようとする。
母はキリスト教徒で、父は母に怒りをぶつける。
兄のミゲルは蜂起のため行動に移している。
エルナンドは思慮深く、ミゲルに腰抜けと言われる。

キリスト教徒の中にもモリスコをかばう者は大勢いる。でも、上の者の一声でモリスコの忍耐も尽きていく。一度暴力が解き放たれたら、どうにもならない現実を改めて知った気がした。

戦争の描写はつらいが、そんな中で普通の人々がごく普通に平和に暮らしている(暮らしていた)というのが、浮き彫りになる。エルナンドとマリアの語らい、祖父と伯爵の父との回想場面など、風景描写も美しくて好きだが、切なさが増すようだ。
多少のいさかいはあるにしても、上の人間がいつでも、わざわざ争いを「作る」のだ。

あとがきにもあったが、エルナンドの祖父が
人が豆つぶのように小さく見える。遠くから見れば、キリスト教徒もモリスコも区別がつかない。
みんなただ、人間というだけだ。
という言葉が心に響く。

戦争が終わって、エルナンドとマリアの立場での話が考えさせられた。命が助かって、マリアの元に戻れて良かった、なんて単純に思った自分が恥ずかしくなった。

人が自尊心を持てるかどうかは、ほかの者が自分をどう見るかではなく、自分が自分をどう思うかで決まるのです。
という言葉も心に残った。

児童書だけど、すごく深い話で(でも、物語性もあって)良かったです。(日本の童話や小説と比べてしまう)










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