「獣の奏者」 上橋菜穂子 著 [本(小説)]
上橋菜穂子さん作の「獣の奏者」を読みました。
アニメがきっかけですが、以前、書店の児童書のコーナーで、帯か何かを見て「漫画がアニメ化されるのが多い中、児童書なんだ」と何となく覚えていました。
アニメは、7、8話ぐらい進んだ頃に気がついたのですが、やっぱり最初から見ないとわかりません。(見たかった)
途中、ある回を見ましたが、わりと良くて、気になっていました。
今年の元旦から、一挙放送というのを見つけて、見たのですが、はまってしまい、原作を読もうと思ったのでした。
図書館で予約して読みました。1巻は今年2月、2巻は3月に読みました。
1巻はほぼ一日で読んでしまいました。3巻が8月、4巻は11月、と間があいてしまい、細かいところも忘れて、全体が少し見にくいのですが、簡単な感想を書こうと思います。
アニメを見ていて(20話ぐらいまでですが)イメージしやすかったのか、おもしろくて、続きが読みたいと思いました。
自分は生き物好きというわけではないのですが、生き物のあるべき姿、みたいなものをエリンと一緒に考えるのがおもしろかったのです。
ファンタジー、というと西洋風のものが多い中、昔の日本的な舞台風景も、新鮮で好きでした。
アニメを見て感動したのが、エリンの母が処刑される回の話(これは泣きましたが)もですが、ジョウンに助けられた時、ただで人の世話になれない、というようなことをエリンが考えた場面でした。
アニメだし、当然のように、子供なのだから、面倒見てもらうのだろう、と思っていたのに、原作でも、一人の人間として描かれているようで、見る気に(読む気に)なったのでした。
2巻の王獣をめぐる、エサルとのやりとりなども読み応えがありました。
王獣は人に慣れない生き物だけど、2巻の最後で、エリンと一瞬のふれあいがあったのが、「人と獣の物語」として作品の全てを表している場面のように思えて感動したのでした。
3巻から続編が出て、どういう話が展開するのかと思っていたのですが、3巻は2巻と話の根本は同じように思えました。
探求編となっていますが、闘蛇のことがさらに詳しくわかり、2巻も王獣のそれのように、だぶったのです。話をくっつけた感、というのもやっぱり少しありました。
エリンは母になっていて、息子のジェシや夫イアルとの家族の物語も良いのですが、いまいち印象に残りませんでした。
最後は悲しいけど、やっぱりこういう終わり方しかないだろうな、と納得できるものでした。
エリンが言う
「戦は絶えることはないけど、それでも人は道を探し続ける。人というのはそういう生き物」
という言葉や
「人の手で繁殖させられた闘蛇の変化や、野にあれば起こるはずのない、異常な状況におかれた獣たちがくるっていった」
というのは、現代にも、また人間にも通じるテーマのようで、考えさせられました。
それに関連して、以前読んだ新聞で思い出したことがあります。
人間の性格は、結局は遺伝や素質の部分が大きく、それがあまりよくないものでも、あるがままを受け入れて認めていれば、そこそこ幸せな人生を送れる。無理やり矯正しようとすると、そこに闇の心が生まれる、というものでした。
「異常な状況におかれた獣たちがくるっていった」場面は、現代の人間のようにも思えました。
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