最近の読書 2020年秋 その2 ―覚え書― [本(小説)]
「最近の読書」引き続き古典文学です。
「車輪の下」 ヘルマン・ヘッセ 高橋健二 訳 新潮文庫
この年齢になって初めて(?)読みました。
読まなかったのは、(詳しく知らないが)自分と主人公が似ていて余計落ち込んでしまうのでは?生きづらくなるのでは?とか思っていたのです。
今だったら読めるかと思い(やっぱりヘッセの代表作だし)、読んでみました。
思ったより読みやすく、それほど暗くなかった。
一人称で主人公の心理が細かく書いてあるのでは?と勝手に想像して、難しい先入観を持っていた。
主人公のハンスは才能がある子どもで、周囲の期待に応えて勉強にうちこんでいた。
裕福でない限り、小さい町では彼の将来はほぼ決まっていた。ハンスは町から一人、州の試験に通り、神学校へ入る。
元々自然児で(釣りが好きだったり)、感性が鋭く傷つきやすいハンスは、学校の寄宿生活で仲間と敵対したり、校長にうとんじられたりして、勉強に興味を失っていく。
友だちで、詩人であるヘルマン・ハイルナーの感化を受けたことも一因だ。
ある時ハンスは授業中、妙な心理に陥ってしまう。
百年以上前の話だが、現代の不登校やひきこもりの子どもと(かつての自分も)すごく通じるようなものがあって、共感した。
細い少年の顔に浮ぶとほうにくれた微笑の裏に、滅びゆく魂が悩みおぼれようとしておびえながら絶望的に周囲を見まわしているのを見るものはなかった。
学校と父親や二、三の教師の残酷な名誉心とが傷つきやすい子どものあどけなく彼らの前にひろげられた魂を、何のいたわりもなく踏みにじることによって、このもろい美しい少年をここまで連れて来てしまったことを、だれも考えなかった。
いまやくたくたにされた小馬は道ばたに倒れて、もう物の役にもたたなくなった。
ハンスの心が衰弱していったのも、小さなことが積み重なって、自分でもこれといった原因がわからない感じなのが、現代と重なるようだ。
でもハンスは、幼年時代に友だちと遊んだ思い出があったり、気にかけてくれる大人もいて、少しずつ心が動くことを体験して、見習い機械工として働けるようになる。
ハンスは生まれてはじめて労働の賛歌を聞き、味わった。―
彼は、自分というささやかな人間と、自分のささやかな生活とが、大きなリズムに接合されたのを感じた。
最後が何となく覚えがあって、20代にもしかして読んでいたのかもと思った。(記憶すらないぐらい印象が薄かった?)
10代、20代もですが、今の時代に大人に読んでほしいと思いました。
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