「ひきこもりと家族トラウマ」 服部雄一 著 [本(新書/心理・教育)]
前回少しふれた本「ひきこもりと家族トラウマ」について書きます。
これは、自分にとって恩人?とも言える特別な本になりました。
自分のことがようやくわかって、確かなものになった気がしました。
以前書いた「『アダルトチルドレン』完全理解」も、そのきっかけになりましたが、当時はやっぱり専門的だったりわかりにくいところもあったし、その後は過去や自分のことを考えないようにしていました。
(自分の感情を意識して「考える」より「感じる」ようにしていました)。
でも、現実は仕事が見つからず、また行き詰っていました。(何度目?)
どのページも自分の経験や思っていたことを代弁してくれているようでした。
ひきこもるという行為は症状の一部にすぎないこと。
ひきこもりは対人恐怖、感情マヒ、心因性の身体症状など多彩な症状があり、その本質的なものは人間関係のトラウマから人間不信に陥って人とうまく関われない「病気」であること。
ひきこもりの多くは本当の自分が体の中に隠れ、現実の生活に参加していません。そのために、何のために生きているのかわからない、人と親しくなれない、居場所がない、現実感がないなどの感覚を持っています。
ひきこもりは成長期に自由な自己表現ができなかった人たちです。具体的には幼児期に親に甘えていない、親に本当の自分を隠したなどです。
「ひきこもり」についての症状や家庭環境、いろいろな症例での本人の感情など、あまりにもぴったりで驚きました。
自分が思っていて、うまく言葉にできなかったことが、わかりやすく実際的に書かれていて、実感がありました。
「潜在的ひきこもり」と「感情的ネグレクト」という言葉に救われました。
何となく自分は外見は違うけど、「ひきこもり」なのでは?と思ったこともあったのですが、確信が持てませんでした。著者が社会参加するひきこもりをこう呼んでいることで、自分だけではないことがわかって、安心したのでした。
「感情的ネグレクト」は今までの自分のつらさを理解するのにぴったりな言葉でした。
ようやく(自分で)自分を認められたように思えました。
ひきこもりの心理療法で「感情を取り戻す」「幼児期から表現できなかった『本当の自分』を復活させる」というのはここ数年(当時)自分で意識してやってきたことでした。
自信が持てた気がしました。
もう一つ救われたのは、トラウマ性の病気は「過去に目を向けないと治らない」という言葉でした。
「過去に目を向けるのではなく、これからが大切だ」という日本的治療はひきこもりの感情をさらに抑圧して病気を悪化させる、というのは、自分が経験してずっと悩んでいたことでした。
過去のつらい感情を認めてもらえたら、聞いてもらえたら、それを手放せて良くなっていくかもしれないのに(実際、自分の場合、ほんの少しのそれがきっかけになった)、理解してもらえない。
自分が思っていたことは、間違いでなかったと思えました。
ひきこもりを価値観の違いから理解するための「マスローの法則」や第五章の「共依存社会とひきこもり」も共感しました。
共依存社会というのは、今ではもっと進んだように思います。
今の「空気を読む」とかいうのも感情を抑圧することにつながっていて、社会全体がひきこもりを加速させているような気がします。
著者はあとがきで「ひきこもりは人間と関わりが持てない病気」であり、その原因は「親子の絆の喪失」ということを書いておられます。
今の若者の自殺もそれと無関係ではないように思いました。
2005年発行の本で、ひきこもりも今は多様化していると思いますが、心の問題を持っている人はぜひ読んでほしい本です。
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