SSブログ

「日本の宿命」 佐伯啓思 著 [本(新書/その他)]

関心がないことはないのですが、あまり読んだことがない本を読みました。
佐伯啓思さんの「日本の宿命」です。
佐伯さんは新聞のコラムで共感することが多いなと名前を覚えていて、著作を読んでみたかったのでした。

(後で書く)少し前、話題になったマイケル・サンデル著の「これからの『正義』の話をしよう」に対抗して(?)これを選びました。
(ジャンルは少し違うが)「これからの―」がアメリカ的でついていけない感じだったので、日本のことをどう思っておられるのか知りたかったのです。

日本の宿命 (新潮新書)

日本の宿命 (新潮新書)

  • 作者: 佐伯 啓思
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/01/17
  • メディア: 新書


2011年から12年にかけての連載に加筆されたもので、少し前の日本の状況が書かれているが、根本の問題はほとんど変わっていません。
今日の日本社会の混迷は、近代主義が幸福につながるという価値観を疑わないところだと著者は言います。
自由の拡大、平等や民主主義の進展、経済成長、人権の拡張など、これらはどこか借り物で腑に落ちていないにもかかわらず、正しいこととして、疑問を呈することを許さないのです。

近代主義や第三章の「無脊椎の国、ニッポン」いうのは、幕末の「開国」から始まっているという話は、すごく説得力がありました。
明治維新、終戦後、グローバリズム、TPP―。
何度も「開国しなければならない」「世界の潮流に乗り遅れてはならない」
「世界(アメリカ)」=「先進的」=「普遍的」で「日本」=「後進的」=「特殊的」という図式(思考)がずっと続いているのです。(それは、そのまま「田舎(地方)」を捨てて「大都市」をとるということにもつながっている)

そうして失ったものは、日本人の「精神」「義」「日本的なもの」と言います。
(三島由紀夫は「日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残るのであろう」と言ったそうですが、自分も、現代まさに、街の風景や、文化といったものに、それを感じていました)。

「開国」というのは、異質なものに出会い、世界は多様であることを知ること。そして自国の自文化の独自性を知ること、認識すること、という著者の意見に共感します。

自分も感じていた、第一章の「『橋下現象』のイヤな感じ」に始まる現代の政治や、過去の戦争、アメリカとの関係などが、わかりやすく書かれていて勉強になりました。
多くの人に読んでほしいです。




「これからの『正義』の話をしよう いまを生き延びるための哲学」
マイケル・サンデル 著   鬼澤 忍 訳

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学

  • 作者: マイケル・サンデル
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/05/22
  • メディア: 単行本



これは、テレビの講義で時々見たことがあって、興味を持っていました。
難しそうだが挑戦しようかと借りました。(上記の本より先に読み始めた)。

第1章は「正しいことをする」として、ハリケーンの後の便乗値上げの論争の話がありました。
次は勲章にふさわしい戦傷についての話。
最初の十数ページで、早くも読むのがしんどくなりました。
前者は議論するまでもなく、だめだと思うし、後者は、そんなことを考える時間とお金を、戦地に行かないことに向けられないのだろうかと思ってしまったのです。

その後も、こんな議論ができること自体が、余裕があるアメリカ的な考えのように思えて、読むのをやめようかと思いました。
流し読みをしていましたが、興味を持ったのは、第5章「重要なのは動機―イマヌエル・カント」あたりから。
カント、ロールズ、アリストテレスの章は(第7章も)、わりとおもしろく読めました。

いろいろな考え方を知るのに、参考になったところもあるが、「嫌な感じ」もする本でした。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0