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「ルポ 貧困大国アメリカ」 堤未果 著 [本(新書/その他)]

この本はタイトルは知っていたのですが、気になりながら忘れてしまって、遅れてようやく読みました。

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

  • 作者: 堤 未果
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2008/01/22
  • メディア: 新書


2008年発行の本で7年以上前のアメリカのルポですが、予想以上の貧困とそのシステムにショックを受けました。(今はさらに進んでいそうなのが怖い)。

内容は

第1章 貧困が生み出す肥満国民
第2章 民営化による国民難民と自由化による経済難民
第3章 一度の病気で貧困層に転落する人々
第4章 出口をふさがれる若者たち
第5章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」


キーワードは「民営化」
「いのち」に関わる政府の災害対策機関や病院、教育の場である学校など、国家が国民に責任を持つべきエリアを民営化したことで、格差なんて簡単な言葉で片づけられなくなった。
最低限の生活すらできなく、一度落ちると二度と這いあがれない現実に胸がつぶれる。

特に医療に関しては、まさかここまでとは思わなかった。
日本の国民皆保険制度はアメリカにないことは知っていたが、その先のことはあまり考えたことがなかった。
病気になり医療費が払いきれずに自己破産した人のほとんどが、中流階級の医療保険加入者だという。
盲腸で一日手術入院しただけで、100万円以上請求されるなんて、想像できない。

患者だけでなく医師の側も人員・コスト削減で医療ミスは多発、サービスの質は目に見えて低下する。患者の大きな死亡原因の一つが医療過誤という。

学校の民営化も、教師の解雇や国からの教育予算の削減で、貧困家庭の子どもたちは教育における平等な機会を奪われる。
軍に生徒の個人情報を渡す法律があって、貧しい生徒のリストを作り、軍が勧誘するしくみまであるのに驚いた。
学費免除と医療保険という魅力にひかれて、貧困から抜け出すため入隊する。
そうして入隊しても、給料は貧困ラインぎりぎりで、本国へ帰ってもPTSDなど心の病でまともな職に就けないまま、ホームレスになるという。

戦争まで国家の貧困ビジネスになっていることに納得しました。

「政府は格差を拡大する政策を次々に打ち出すだけでいいのです。経済的に追いつめられた国民は黙っていても生活苦から戦争に行ってくれますから。 ―巨大な利益を生み出す戦争ビジネスを支えてくれるのです」

エピローグに「不買運動」(賢い消費者になる)の話がありましたが、「過激な市場原理の流れに呑み込まれないためには、何が起きているかを知ること」が大切だと思い知らされました。


日本でも、前にテレビで、6人に1人の子どもが貧困家庭というのを知りました。これは2005年のアメリカの貧困児童率(18歳以下)と同じで、遅れてアメリカと同じような現状になっているのが怖いです。

2002年には学力の低下を憂えて、競争を導入して、全国一斉学力テストを義務化という教育改革法を打ち出していますが、これも今の日本と同じです。
でも、(自分も)慣らされて、格差が広がっていくことに、鈍感になっていることに気付きました。

知らなかったことをいろいろ考えさせられる本でした。


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