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「悩む力」 姜尚中 著 [本(新書/その他)]

これは以前、宝塚へ行った時、電車の中で読む本を(持って行くのを)忘れてしまい、帰りに間に合わせで買った本です。
買ってまで読みたいものが見つからず、かなり悩んで「これだ」と見つけたのが、この本でした。(タイトルは一応知っていた)。

悩む力 (集英社新書 444C)

悩む力 (集英社新書 444C)

  • 作者: 姜 尚中
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/05/16
  • メディア: 新書


今を生きるいくつかの悩みをテーマ別に考えています。
誰でも一度は考えたことがある(と思う)テーマで、私自身、こんなこと考えても仕方ない、と普段はやりすごして、でも、心の底にわだかまっているものでした。

本文は八章から成っていて、夏目漱石と社会学者マックス・ウェーバーの引用を中心に、著者の考えも交えて書かれています。どれも興味深くわかりやすく、いろいろ考えるヒントになりました。
章ごとに書き残しておきたい言葉がいっぱいです。

第一章 「私」とは何者か
この章は孤独とか人のつながりなど、自分が一番知りたかったことです。
印象に残ったのは「『自分の城』を築こうとする者は必ず破滅する」という言葉です。(カール・ヤスパース《精神病理学者・哲学者》)
自分の城だけを作ろうとしても自分は立てられない。
他者との相互承認の中でしか自我は成立しない、ということでした。

第二章 世の中すべて「金」なのか
これは自分にも身近な問題で、世の中のお金について知ることも多かったです。


第三章 「知ってるつもり」じゃないか

共感することがいっぱいでした。
「情報通」であることと「知性」は別物ということ。

漱石の言葉は印象的です。
「現代の文明は完全な人間を日に日に方輪者に打崩しつつ進むのだと評しても差支ないのであります―」

ウェーバーが予想した(著者の言葉で)「唯脳論的世界」というのも的を得た表現だと思いました。
放縦で、人間中心で、脈絡のない情報が洪水のように満ちた世界。自然の営みとは無関係に、自分勝手な人間の脳が恣意的に作り出す世界。

自分の世界を広げるのではなく、適度な形で限定していく。その場合でも、世界を閉じるのではなく、開きつつ、自分の身の丈に合わせてサイズを限定していく、というのは私のスタンス(目標)と同じで、安心しました。


第四章 「青春」は美しいか
著者の思う「青春」の定義みたいなものが書かれています。
「青春」とは無垢なまでに物事の意味を問うこと。他者との間に狂おしいような関係性を求めようとするもの。
そういうものがない、浅く無難な人間関係の裏返しとして、ふいに極端なものに走るというのも共感しました。


第五章 「信じる者」は救われるか
自由というのはつらいもので(何かを選択しようとするたびに自我と向き合わねばならない)、そこで心のよすがとして、何らかの宗教が必要になる。
「信じる者は救われる」というのは、自分でこれだと確信できるものが得られるまで、悩み続けること。


第六章 何のために「働く」のか 
これも、一番身近な問題で、自分の経験と同じ感じのことが書かれていました。
「金があったら働かないか」という問いから、いろいろなものが見えてきて興味深かったです。


第七章 「変わらぬ愛」はあるか
愛というのはどちらかが何かの働きかけをし、相手がそれに応えようとする限り、その意欲がある限り、愛は続いている、という言葉が印象に残りました。


第八章 なぜ死んではいけないか
V・E・フランクルの引用がすごく興味深かったです。
深いテーマに改めて考えさせられました。


タイトルの「悩む力」というのは「生きる力」につながっていくように思いました。
手元に置いて、折にふれ、読み返したい本です。


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