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「友だち地獄」  土井隆義 著 [本(新書/その他)]

以前、新聞だったかでタイトルを書きとめていた本です。
今の自分の悩みと少し似ているようで、興味を持ちました。

副題は「『空気を読む』世代のサバイバル」で現代の若者の人間関係についての本です。

キーワードは「優しい関係」。
たえず場の空気を読みながら、対立の回避を最優先にする若者たちの人間関係を著者が名付けたものです。

若者たちは周囲の人間と衝突しないため、他人の言動に敏感で、常に神経を張りつめている。
そうした緊張の中では、対人エネルギーのほとんどを身近な関係だけで使い果たしてしまい、外部まで気を回す余力がない。

今の学校生活でのいじめは、そうした狭い人間関係の重さを軽くするために編み出されたもの、という意見は、今まで聞いたもの(いじめの原因など)より説得力がありました。

でも、その息苦しい「優しい関係」は脆弱な自己肯定感を支える唯一の基盤になっていて、撤退できない。

「優しい関係」はその場の雰囲気だけが頼りの移ろいやすく不安定な関係。
それゆえ、相手との間に対立やあつれきも生じやすくなる。
「優しい関係」は対立の回避を最優先にする関係でありながら、皮肉にも潜在的な対立の火種を多く孕んだ関係。
互いの葛藤や違和感、怒りの感情が吐き出されることがないまま、各自の内部に溜めこまれていく。

いじめや「優しい関係」は学校の個性化教育の導入と無関係ではないという意見に納得しました。
自分が違和感を感じていたものが理解できた。
教師と生徒という役割より対等な人間同士の関係になって、教師がトラブルを避けるため生徒の人間関係の空気を読みとり、機嫌すらとる。(教師が友だち感覚で接する「なれ合い型」の学級の方が教師が厳しく指導する「管理型」よりいじめが発生しやすいそうです)。

親子関係でも「友だち親子」というのが増えて、いじめのような深刻な悩みを親に相談しづらくなっている、とのこと。
ここでも本音で話すより、良好な関係の維持を優先させるから。
「優しい関係」は、どこでも身近にある。

「優しい関係」は現実感が損なわれる。
臨機応変に人間関係をスムーズにすることが重要で、肝心の中身が希薄なものになる。
それゆえ、人間関係に偽りの感覚が強くなる。


「優しい関係」に依存せざるを得ないメカニズムがわかりやすかった。
自分のことのように思えるところもあって、参考になりました。

ケータイ・メールでのつながりや、純愛物語の流行、言葉より身体的なものを重視することなど、今まで理解しづらかった若者の心理が身近になりました。

最後の章は若者だけでない、進化する(?)人間関係について、考えさせられました。

友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル (ちくま新書)

友だち地獄―「空気を読む」世代のサバイバル (ちくま新書)

  • 作者: 土井 隆義
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2008/03
  • メディア: 新書


 


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