「愛着障害 子ども時代を引きずる人々」 岡田尊司 著 [本(新書/心理・教育)]
以前テレビで「愛着障害」という言葉を初めて知りました。
通常、親(母親)とのつながりや関係を元にして、他人とそれらが広がっていくのですが、元のつながりがなかったり、うまくいっていないため、人間関係や他人との距離の取り方がわからなかったり、問題が起こる、というものだったと思います。
自分が社会人になってからずっと思っていたことと同じで、興味を持っていました。
読みやすかったです。自分のことのようで、改めて考えさせられました。
愛着は母親との関わり、"抱っこ"から始まります。
重要なのは特定の人との特別な結びつきで見えない絆が形成されるということ。
いくら多くの人がその子を可愛がっても、安定した愛着が育っていくことにはならないそうです。
もう一つ、愛着を脅かすのに、守ってくれるはずの親から虐待を受けたりして、安全が脅かされることがあります。
困ったことがあると、すぐに人に相談して助けを求める人。
逆に、どんなに困っていても人に打ち明けられない人。
対人関係のパターンを知らず知らず支配しているのは、「愛着スタイル」というもので、主に「安定型」「不安定型」「回避型」に分けられ、それらについての考え方、行動パターンなどがわかりやすく書かれています。
「愛着障害の要因と背景」が第二章、その「特性と病理」が第三章で、著名な人物を例に挙げて書かれています。
文豪の川端康成、夏目漱石、ヘミングウェイ、ジャン・ジュネ。アメリカの元大統領クリントン、アップルのジョブズまで、多いのに驚きました。
第四章は「愛着スタイルを見分ける」で、ポイントになる点が書いてあります。(巻末に「愛着スタイル診断テスト」もありました)
第四章までは、自分が思ってきたことを再確認する内容と著名人の伝記を読んでいる感じで、少し類型的で物足りない所もありましたが、後半は良かったです。
知りたかったこと(多分、自分が生きてきた本質は愛着障害の傷を癒すためなのでは?)や身近な人にも当てはまりそうな行動など、心理状態が興味深く読めました。
一番納得したのは「安全基地」というものでした。
愛着の絆が形成されると、子どもは母親といることに安心感を持つだけでなく、母親がそばにいなくても次第に安心していられるようになる。
そういう安定した愛着が「安全基地」で、それがちゃんと確保されている時、子どもは安心して外界を冒険しようという意欲を持てるということです。
十分な安全基地を持たないと、安心して活動を広げられない。
大人も同様で、安定した愛着によって、仕事も対人関係も積極的に取り組むことができる。
自分がずっと求めていたのは、その「安全基地」でした。
母は(家族も)それにならず、自分で代わりのものを確保するしかなかったことでした。
それが、本や漫画などの趣味や勉強だったように思います。
愛着障害の修復過程として"幼い頃の不足を取り戻す"というのが書いてあり、まさに自分がやってきたこと(現在も)に思えました。
子どもの頃に感動したアニメや童話、過去に好きだったものなど、大人になっても好きで安心するのは、楽しかった思い出を取り戻して、安全基地にしたいからなのです。
"傷ついた体験を語り尽くす"というのも、こういうブログを書いています。
作家に愛着障害を抱えた人が非常に多く、作中にもそれが表現されている一節など、興味深かったです。
境界性パーソナリティ障害など心理療法で難しいケースでも、"愛着障害"の部分がうまく手当てされれば良くなっていくことがあるそうで、"愛着"は少なからず重要な役割を果たしていることにうなずけます。
はじめの言葉に「人間が幸福に生きていくうえで、もっとも大切なもの―それは安定した愛着である」とあります。人格のもっとも土台の部分を形造っているのです。
多くの人に広い範囲で参考になる本だと思います。
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