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「教育の力」 苫野一徳 著 [本(新書/心理・教育)]

不安な世の中だからなのか、久しぶりにこういう本が読みたくなりました。


「教育の力」

教育の力 (講談社現代新書)

教育の力 (講談社現代新書)

  • 作者: 苫野 一徳
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2014/03/19
  • メディア: 新書

義務教育段階の「よい」教育について、構想、実践を論じた本。


自分の世代には、ほとんど普通だったことも多いが、整理されて言葉になるとわかりやすく、新たに考えさせられました。

序章に「そもそも教育は何のため?」とあって
自分が「生きたいように生きたい」という自由のため、他者の自由も承認すること。
「自由の相互承認」を実質化するため、というのが、目からうろこでした。

そのための力として、「自由の相互承認」の”感度”を育むことと「学力」の二つを焦点にしている。
「学力」というのは文字通り「学ぶ力」。

「学ぶ力」の三つのキーワードは学びの「個別化」「協同化」「プロジェクト化」。
学び方の多様性でいろいろな教育が挙げられている。

海外の教育で、決められた内容を決められた通りに教えるということを一切しない、というのが印象に残りました。読み書きでさえ強制しない。どんな子も、時が来れば必ず「読みたい」と思うようになる。自ら学び始めると、あっという間に他の子どもたちに追いつく、という。

「反転授業」というのにも興味を持った。(自分には向かないと思うが)
家で短い授業動画を見て、学校で協同学習を行う。個別化と協同化の融合で実現性の高い方法だそう。


「相互承認の感度」を育む学校空間については、自分の経験と重なるところがあった。
「相互承認の感度」の内実は自分を承認できること。他者を承認できること。他者からの承認を得られること。

学校空間で同質性を求める空気が過剰すぎる。人間関係を流動化して、同質性から離れられる機会を保障するというのは良いことだと思いました。

「同質」を求められすぎる人間関係は、自分を抑えて人に合わせるということ。無意識のストレスがかかる。自分というものが希薄になる。自分の感情が希薄になる。(それが不登校や大人になってのひきこもりにもつながっている気がする。仕事の能力的にはそれほど問題ないのに、ここでも「同質」を求められすぎるのだ。)

自分の場合は「失敗」とかマイナスの感情を認めてもらえないことで「心の安全基地」が得られない、親に頼れない(否定される)ことだったのだが、自分を認めてもらえないと、学ぶ力どころか、子どもにとっては生きる力さえなくなっていく。(「学ぶ力」は後から付いてくるし、取り返しがきく。今の子どもが学校が、生きるのがつらいって、無意識にこれが根っこにあるのでは?)

自分はむしろ「勉強」に力を見出したり(逃げたり?)、好きなことがあったから、ギリギリ持ちこたえられたところもあるが、「承認」という心の部分は、大人になってもわからなかった。

「心の安全基地」が十分得られないと、自らの存在価値に自信が持てないまま大人になり、絶えず他者の視線に怯え、他者の評価に過剰反応するようになる傾向がある、という。(苦しんでいたことそのままだ)

最後の「共通了解をつくる」というのにすごく共感しました。「相互承認の感度」を発展させて、二項対立で争うのではなく、双方が(できるだけ皆が)納得できる、建設的な「第三のアイデア」を見出せる思考の力を育むというものです。

教育の「本質」について考えさせられる本でした。



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